特集【血流改善サポート~夏の冷え対策~】 血流・血管ケア市場、拡大続く

 「血管は人体最大の臓器」とも称され、全身に張り巡らされた血管を繋ぐと約10万km、血管を構成する内皮細胞の面積は約7,000㎡にもなると言われる。その血管を通る血液は、全身を隈なく巡り、臓器や細胞に酸素や栄養素、ホルモンなどを運ぶと同時に、二酸化炭素や老廃物、有害物質を回収する。さらに、体内に侵入してきたウイルスやカビなどの異物を排除する免疫系を司るなど、生命活動において重要な役割を果たしている。ただ、加齢をはじめ、栄養バランスの偏った食事、運動不足、不規則な睡眠時間、喫煙、過度なストレスなどに起因する身体の酸化や糖化によって、血管の内皮細胞は機能低下を起こし、血管の柔軟性は崩れ血流停滞を招く。血液が十分届かず、抹消の毛細血管が消失する「ゴースト血管」状態に陥るなど、現代人は血管を病む危険性にさらされている。血管の健康状態の悪化は、動脈硬化に陥り、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病、認知症などの生活習慣病から、肩コリ・腰痛、冷え症状まで、様々な疾病に繋がるとされている。

 

 近年は“血管ケア”の重要性に関して、メディアで取り上げられる機会が増えており、血流改善や血管ケアのニーズも伸長。健食・サプリ市場でも血流改善や血管ケア、冷え対策などを訴求する製品は年々増加している。関連する機能性表示食品は、血流・冷え関連が約370品、血管関連が約90品(撤回除く)となり、この1年間で併せて約100品増加した。主な機能性関与成分をみると、血流・冷え関連では、モノグルコシルヘスペリジン、イチョウ葉由来のフラボノイド配糖体およびテルペンラクトン、ヒハツ由来ピペリン類、ショウガ由来ポリフェノール(6-ジンゲロール、6-ショウガオール)、ナットウキナーゼ、コーヒー豆由来クロロゲン酸、カシスアントシアニン、カメリアサポニンB2 ―― など。ヘルスクレームは、「冷えにより低下した血流(末梢血流)の改善」をはじめ、「脳血流の改善に伴う記憶力の維持」「目の周りの血流量を増やす(ピント調節機能維持)」などが続いている。

 

 一方、血管関連では、松樹皮由来プロシアニジンB1及びB3、カツオ由来エラスチンペプチド、黒大豆ポリフェノールなど。ヘルスクレームは、「加齢とともに低下する血管のしなやかさ(柔軟性)(血管を締め付けた後の血管の拡張度)の維持に役立つ」旨が多い。また、機能性関与成分ではないものの、高麗人参や田七人参、植物発酵エキス、ビタミンE、ミミズなど、血流改善素材の動きも堅調だ。インテージの「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2024」によると、血行促進・血流改善市場は前年比14%増の111億円、冷え対策市場は同12%増の57億円、血液サラサラ市場は同7%減の267億円と報告。概ね順調に推移していることがうかがえる。

 

 指圧効果や温熱効果を介して、体の外側から血流改善にアプローチするNonFoods分野の動きも堅調だ。特に近年は“温活”実践者も増加し、冷えに無防備になりやすい“夏場の冷え対策”の重要性も浸透してきた。温熱商材を展開するトラストレックスやフジカでは、「単なる冷え対策ではなく、自律神経バランスの調整や快眠、常に免疫力を高めておきたいとの目的で利用するユーザーが増えており、夏場でも売れ行きは底堅い」という。入浴剤市場も好調で、厚生労働省の薬事工業生産動態統計によると、2024年の国内出荷金額は、前年比約8%増の約602億円。また家庭用医療機器は約745億円。その他、血流改善や温活に有効な温感肌着や健康機器・雑貨類などを加えると、Non-Foods分野だけで2,000億円程度の市場を有すると推計される。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1812号(2025.5.21)で
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