特集【アクティブシニアサポート(注目の骨・筋肉対策素材)】 シニアのヘルスリテラシー向上、 市場成長続く

 総務省が昨年9月15日、敬老の日に合わせて発表した我が国の高齢者人口は、総人口における65歳以上人口が前年比2万人増の3,625万人、総人口に占める割合が同0.2ポイント上昇の29.3%と過去最高を記録した。年齢階級別にみると、団塊世代が後期高齢者を迎える「2025年問題」を受け、75歳以上人口は前年比71万人増の2,076万人、80歳以上人口は同31万人増の1,290万人となった。70歳以上人口も同9万人増の2,898万人となっており、超高齢社会を背景に、患者数の増大が懸念されるフレイルや認知症に対する医療費や介護費および、その体制の逼迫が懸念されている。

 

 これら悲観的な数字ばかりがセンセーショナルに報じられているが、一方では65歳以上のシニア世代の方が、30代よりも健康意識が高く、運動習慣が活発であるとの調査結果も見られる。DM三井製糖が昨年10月に発表した「シニアの運動習慣」によると、全国600人の男女を対象に実施したアンケート調査の結果、厚労省が推奨する身体活動量 1 日40分を満たしていると回答したシニア世代は52.3%に対し、30代は基準である1日60分を満たしているとの回答は34.0%に留まった。なかでも70~80代女性が58.0%と最も高い数字となっているのに対し、30代女性は24.0%と最も少ない結果となっている。また、「令和 6 年版高齢社会白書」によると、65歳以上の者の新体力テストの合計点は向上傾向にあり、2022年度の65~69歳、70~74歳、75~79歳の男女の新体力テスト(握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、 6 分間歩行)の合計点では、男性は2004年以降、概ね横ばいを維持、女性は2004年以降向上している。さらに、健康寿命についても2019年時点で、2010年比で男性2.26歳、女性1.76歳延びていることが記載されている。

 

 背景には、シニア層のヘルスリテラシーの高まりが挙げられる。複数の民間調査データでも、シニア層の関心事のトップは、「健康」という回答が占めており、シニア層には、健康を意識し積極的に運動を行う人が多いということを裏付けている。ヘルスリテラシーが高い上、経済的余裕を持つ人が多いシニア世代は、健康食品の購買金額も高い。ECに対応するシニア世代も増加傾向にある中、通販協による「第30回全国通信販売実態調査」では、全世代の中で、通販で健康食品を購入した世代は、70代が最も多かったと公表している。予防を軸とする健康産業にとっては、超高齢社会は悪いことばかりではない。 

 

 シニア層に多い症例の1つが、加齢に伴い筋肉量や骨密度が減少することで起こるサルコペニアや骨粗鬆症などの症例だ。進行するとフレイル状態に陥り、最終的には寝たきり、要介護に繋がる。こうした中、筋肉量の維持に関する届出が受理されている機能性表示食品は240品(撤回除く)を超える。一方、骨(軟骨含む)に関する届出が受理されている機能性表示食品は280品(撤回除く)を超える。両分野を合わせると500品以上となり、機能性表示食品全体の1割弱と、人気の高いカテゴリーであることがうかがえる。筋肉分野では、GABAやⅡ型コラーゲン、クレアチンモノハイドレート、バナバ葉由来コロソリン酸、マスリン酸、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボン、HMBなどが機能性関与成分となっている。

 

 機能性表示食品以外でも、近年はシニア層のタンパク質強化を訴求したプロテイ ン製品、アミノ酸製品などの開発も活発化している。一方、骨分野では、カルシウムを筆頭にビタミンDや珪素などが骨密度の強化に良い食品素材として定番化しているが、機能性表示食品制度により、グルコサミン塩酸塩やサケ軟骨由来プロテオグリカン、β-クリプトキサンチン、マルトビオン酸Ca、大豆イソフラボンなどが機能性関与成分として受理されており、素材のバリエーションが拡大している。つづく

 

 

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