特集【DHA・EPA】 世界市場で拡大続く、新原料や新知見も
米国EPA・DHAオメガ3業界団体Global Organization for EPA and DHA(GOED)試算によると、2023年の世界の原料市場規模は20億9,000万ドル(前年比22.5%増)で2ケタ増となり、最終製品の世界市場は524億ドル(日本円換算で7兆4,000億円超)を突破。「2022年の世界的な価格インフレにより、多くのカテゴリーで数量が減少したにもかかわらず、EPA・DHA市場の売上は上昇している」とし、2025年まで年率3.3%の成長を見込む。DHA・EPAの世界市場が拡大している背景には、様々な要因がある。EPAは1960年代後半にグリーンランドに住むイヌイットが心臓病で亡くなる人の割合が低いことに注目した研究を機に、中性脂肪の低下など様々な作用が明らかとなり、ほぼ純度100%の医薬品(純品)は、高脂血症や閉塞性動脈硬化症の治療薬として応用されている。
一方、DHAは1989年に英国で脳や網膜 などの神経系に豊富に含まれる栄養素であることが分かり、日本でも子供の知能指数の高さについて魚食(DHA)による影響を示唆する研究発表を機に、「DHAを食べると頭の働きが良くなる」とのフレーズで脳機能改善訴求の認知が進んだ。いずれも体内でほとんど生成されない必須脂肪酸の一種として、サプリメントをはじめ、食品添加物や乳児用調製粉乳、ペット向けサプリなど様々な分野で活用されている。EUでは、乳児用調合乳の成分にDHAの添加が義務化されており、米国でも乳児用粉ミルクへの配合が定着している。東南アジアでは、欧米同様に妊婦期や授乳期のDHA摂取が重要視されるほか、日本に次ぐ高齢化を背景に、脳機能改善訴求を中心に需要が高まっており、医師がドリンクやシロップを進めるケースもあるという。 3月に米国で開催された「ナチュラルプロダクツ展」でも、オメガ3は圧倒的人気で、魚油やクリルオイルなどのメジャー素材と共に、特許技術で吸収性を高めた原料や、心疾患リスク改善を訴求したEPAサプリ、EPA+DHA+ALAベースにビタミンやプロテインを配合したバータイプ商品など、さ様々な原料・商品が展示された。肉食文化で魚の摂取量が少ない米国では、オメガ3系脂肪酸をサプリメントで補う考えが浸透している。
一方、国内市場をみると、健康維持の定番サプリとして中高年層を中心に底堅い市場を形成している。機能性表示食品については、一昨年6月のさくらフォレストの措置命令を受け、同一の機能性関与成分および科学的根拠となる88品目全て撤回申出を行ったことが影響し、2022年度47品目、2023年度30品目、2024年度8品目と受理数が激減しているが、代表的なヘルスクレームである中性脂肪抑制や脳機能改善の認知度は高く、アイケアや関節サポート、末梢体温、レム睡眠といった新たな領域での用途開拓が進む。近年は、食の「簡素化志向」の上昇傾向も影響し、DHA・EPAを摂取する機が減少するなど“魚離れ”が深刻化する中、DHA・EPAを効率的に摂取できるサプリメントの活用が広まっている。つづく
詳しくは健康産業新聞1811号(2025.5.7)で
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