特集【静岡県】 受託各社、海外展開に注力

 日本のほぼ中央に位置し、関東圏と関西圏にもアクセスが良い立地から製造業が盛んなことで有名な静岡。なかでも健康食品の受託製造企業が軒を連ねており、健康産業界を支える屋台骨となっている。総務省が発表する経済工業統計調査によると、全国の栄養補助食品(錠剤、カプセル等の形状が対象)の出荷額は3,623億6,800万円。そのうち静岡県の出荷額は657億3,700万円となり、13以上にわたって全国トップを独走している。しかし、そんな受託各社を悩ませるのが景気の停滞による売上の飲み悩みだ。

 

 全国の受託企業を対象に、昨年末本紙が実施したアンケート調査では、24年に増収となった企業は51.3%と約半数だったものの、23年の54.7%からは若干の減少。伸び率別にみると、1ケタ増が34.2%で最も多く、2ケタ増は17.1%だった。減収は38.5%に留まったが、経営状況について聞いた質問では、「良かった」が21.4%、「悪かった」が25.4%、「どちらともえいない」が53.2%となり、足踏み状態であることがうかがえる。静岡の受託各社でも同様で、「経済の落ち込みで消費者が健康食品の支出を控えている印象」「トレンドの商品もなく、我慢の時期」といった声が聞かれた。また、共通して頭を悩ませていたのが昨年の小林製薬問題による影響だ。紅麹の安全性を問題視されたことで、特に通販をはじめとしたリピーターの離脱、健康食品離れが起こり、健康食品メーカーに影を落とした。もちろん製造を請け負う受託メーカーへの影響は小さくなく、市場シュリンクの不安を抱える。

 

 さらに、深刻なのがコスト高による利益の圧迫だ。食品原料や各種資材など、原材料コストや電気代・水道代などの製造コスト高騰に加え、為替の影響を受け、薄利構造になりつつある。販売会社へ値上げの理解を求める取り組みを行っているが、なかなか解決までは至らない状態だ。そうした中、各社力を入れるのが海外への展開だ。経済の高成長が期待できるアジア圏などを中心に新たな販路開拓を積極化している。国内需要の落ち込みを海外による売上で補填したい考えだ。ここ数年、健康食品メーカーによる越境ECの利用は年々拡大傾向にあるが、最近は中国経済の不調や、今後の見通しが不透明な事を受け、欧米や東南アジアへの展開にシフトする企業も増えている。特にベトナムやマレーシア、インドネシアなど東南アジアへの輸出も活況だ。日本の優れた製剤、加工技術が評価されており、“メイドイン静岡”のサプリメントにおける世界シェア拡大に大きな期待が寄せられている。

 

 受託メーカーによる海外展開についてヒアリングしたところ、ASEANなかでもイスラム圏への展開を視野に入れる企業が多かった。言い換えば“ハラル対応”だ。先の受託企業アンケートでは、「ハラル認証導入済み」は24.3%、「導入予定」が8.1%とまだまだ割合は少ないものの、イスラム圏での展開を行う企業には必須の取り組みとなっている。AFC-HDアムスライフサイエンスでは、千葉工場をハラル専用工場に転換。2024年11月に3製品で、インドネシアのハラル認証「BPJPH」を取得。今夏より出荷する予定だという。三協でも日の出工場のハードカプセルラインでハラル認証を取得し、展開を加速させたい考え。業界に先駆けてハラル認証を取得したアリメント工業でも、ハラル認証のさらなる活用を目的に営業を積極的に実施していきたいとしている。つづく

 

 

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