【インタビュー】 グルコサミン、“腸内環境”“寿命延伸”で社会実装に

(公財)東洋食品研究所 研究部 研究主任 新谷 知也 氏 

 (公財)東洋食品研究所の新谷知也氏は、腸内細菌叢を調節する食品成分や糖代謝を調節する食品成分などの機能性研究を手掛ける。グルコサミンの機能性研究も行っており、新たな健康機能を介した社会実装の実現を目指す。新谷氏に現在の取り組みや、今後の研究活動などについて話を聞いた。

 

── グルコサミンの魅力について

 かつては水産業の廃棄物となっていたエビ・カニ等の殻を原材料に利用してきたことで、市場において比較的低価格で流通できること、また、国内外において機能性食品素材として長年に亘る食経験とそれに基づいた安全性の実績があることは、他の素材にはない魅力と思います。さらに、世界的に利用されてきたことで、海外では大規模な疫学研究の対象となっています。グルコサミンの摂取者は死亡率が低いといった研究報告もあります。

 

── 現在の研究内容や、今後予定している取り組みについて

 最近では、神戸大学が開発したin vitroヒト大腸内細菌叢モデルを用いた試験で、グルコサミンの腸内細菌叢改善効果を見出しました。善玉物質である酪酸菌が増えていることが観察され、長寿に寄与する可能性があることが示唆されました。研究成果は、昨年12月に開催されました日本食物繊維学会第29回学術大会等で報告しています。研究成果を踏まえ、今夏にランダム化の臨床試験の実施を予定しています。また、グルコサミンサプリメントを使用した便通改善を目的とした臨床試験(単群の前後比較オープン試験)を行っており、ほぼ完了しています。これら研究成果から、グルコサミンが腸内環境に影響を与えることが示唆されており、その要因の 1 つとしてグルコサミンの消化管での吸収の低さだと考えられます。

 

 一方、寿命延伸をテーマとした取り組みでは、米国国立老化研究所が実施するアンチエイジング物質の検証プログラムに採択され、米国の3施設でグルコサミンのマウスへの長期投与試験を実施することになりました。国内外の複数の研究者と共同の提案で行います。現在、予備的な投与が行われており、長期投与は今秋の開始を見込んでいます。マウスの寿命が3年程度であることを考慮すると終了まで約4年を要します。

 

── グルコサミン市場に期待する点は

 機能性表示食品では、腸内環境や血管内皮領域におけるヘルスクレームは十分に可能性があると思います。腸内環境については、国内での臨床試験はこれからですが、血管内皮については、これまでに、久留米医科大のグループによる臨床試験の報告や、順天堂大のグループによる非臨床試験の報告があります。事業者様の今後の取り組みに期待したいです。つづく

 

 

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