【有識者インタビュー】 サプリメントの定義を明確に
神奈川県立保健福祉大学 教授/(一社)日本スポーツ栄養協会 理事長 鈴木志保子 氏
プロスポーツの現場ではサプリメントの教育はどのように行われているのか。アスリートのアンチ・ドーピングに対する取り組みはどこまで進んでいるのか。『スポーツ現場におけるサプリメントの利用状況と活用コンセンサス』のプロジェクト班長で公認スポーツ栄養士であり、日々、アスリートの栄養指導を行う鈴木志保子氏に、サプリメントとアンチドーピングの現状と課題について話を聞いた。
―― アスリートのサプリメントの必要性
管理栄養士や薬剤師などの中にはサプリメント否定派の方々もいらっしゃいます。確かに、過剰摂取は病気のリスクもありますし、はっきりとしない成分摂取によりドーピングの危険もあります。かといって足りない栄養素を摂取することは、競技をする上で必要です。正しい知識で積極的な摂取により安全でパフォーマンス向上に繋げることが重要です。また、サプリメントのエビデンスは大事ですが、選手それぞれフィジカルやその時の体調が違うことから、エビデンスをそのまま現場で使うことは極めて困難です。サプリメントはお守りであってはいけません。だからこそ、エビデンスと現場の融合ができるようにアスリートの指導を行っています。
―― スポーツ現場のサプリやドーピング認識について
ドーピングについて指導者以上に勉強しているアスリートもいます。しかし、アスリートが摂取するサプリメントも健康食品と捉えてしまうと、昨年の紅麴問題のように「サプリメントは健康を害する」というイメージを持ち、アスリートが混乱してしまいます。スポーツにおけるサプリメントの定義づけを、今一度はっきりとしておくことが大事です。自分の体を守るためにアンチドーピング活動があり、競技で勝つためにサプリメントが存在します。この相反する要素のバランスを取っていくのが難しいからこそ、サプリメントとドーピングの教育が必要です。「アンチ・ドーピング」認証マークもスポーツ業界における一つの判断基準になると考えられます。
―― スポーツサプリメーカーに期待することは
アスリート各々の体格や運動量等によって栄養素を調整して摂取すべきで、「スプーン 2杯のプロテインを牛乳で溶かす必要がある人」と「1杯のプロテインを水で溶かすだけで十分の人」もいます。アスリートのように微妙な変化で記録が変わってくる人達に向けて、製品の使用量や飲む時間帯などを判断できるシステムがあってもいいと考えています。つづく
詳しくは健康産業新聞1808号(2025.3.19)で
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