連載⑬【海外ヘルスケア最前線】 NMNの市場変化がもたらす影響
欧米を中心に変化するヘルススケアビジネスに携わり、健康食品事業を手掛けるOctroll㈱・代表取締役社長の田中啓之氏が、海外ヘルスケア市場の最新動向などを紹介する。
抗老化・エイジングケア分野を牽引する素材としてNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)をベースとしたサプリメントの販売は、日本市場において引き続き堅調です。大手販売会社の取り扱いなども増え、インバウンド需要も回復基調にあります。こうしたトレンドについてはアジア市場についても同様であり、香港や東南アジア市場では、NMNと銘打たれた大々的な商品広告を街中で頻繁に見掛けます。一方で、NMNブームの火付け役とも言え、最大需要地であった米国市場では、22年後半に米国食品医薬品局(FDA)が、「NMNが新薬として研究・調査中である」ことを理由に、サプリメントとしての販売を禁止する方針を示しました。また、越境ECでのNMN商品販売がピーク時は850億円程度まで達したと言われる中国市場でも24年春頃から規制が強まっています。
活況を呈する(中国以外の)アジア市場と、規制が強まる巨大市場、という相反する状況は、結果として抗老化・エイジングケア市場を良い意味で刺激し、盛り上げている印象を受けます。具体的には、米国・中国の低迷により、競争原理でNMN原料価格が下がり、消費者にとってより手に取りやすい価格帯になっていることが挙げられます。こうした状況でNMN市場がより拡大することが期待されます。また、NMNと同様にNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体として機能するNR(ニコチンアミドリボ シド)やレスベラトロール、PQQ、CoQ10など、NMNが注目を集める以前から同分野で展開していた素材が再注目されています。米国市場ではNAD+の前駆体としてのトリゴネリンなどを大手食品会社のネスレが積極的に研究を進めており、今後の展開に注目が集まっています。つづく
詳しくは健康産業新聞1808号(2025.3.19)で
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