特集【プラントベース】 「潜在需要の発掘を」 プラントベースならではの価値で
農水省フードテック官民協議会が設立した“Plant Based Food普及推進ワーキングチーム”では、プラントベースのライフスタイルを広げ、根付かせる活動を行っている。事務局を務める一般社団法人Plant Based Lifestyle Lab(通称:P-Lab)は、企業や団体などのプラントベースフードに関わる人たちが交流する場を提供、そこで得られた意見をプラントベース普及推進のためのロードマップに反映させることを目指している。P-Labはこのほど、プラントベース食品に関する意識実態調査を行った。2024年の認知度は前年比1.1ポイント増の15.9%に。「食べたことがある」は前年比1.4ポイント増の42.5%となった。認知度および喫食経験ともに増加傾向を示した。一方、販売価格が課題になっている。物価高による消費者の節約志向という逆風を受け、「興味関心がない」が前年比4.5ポイン増の51.1%となった。喫食意向も減少傾向(25.2%)を辿っている。プラントベースユーザーの実像も、デプスインタビューで調査した。喫食者は、健康維持や体型維持を深く考える意識の高い人が多い傾向に。価格面よりも健康価値を優先することがわかった。一方、プラントベースを食べない人は、健康診断で注意喚起されるなど、自身にとっての切迫度の高さによって行動変容の可能性はあると推察している。
プラントベース市場は海外スタートアップのフードテック革命により急速に拡大した。欧米のスーパーマーケットでは、精肉やチルドコーナーでプラントベース食品が定番化、健康面や環境配慮で意識的に肉食を減らす“フレキシタリアン”のほか、普段肉を食べている人の需要も開拓した。カテゴリーは肉代替に留まらない。卵やアイスクリーム、ミルクの代替品など、食の選択肢も広がった。昨今では米国市場に売り込みをかける韓国や台湾などの動きも目立つ。ヨーロッパ市場は、ヴィーガン発祥のイギリスはもとより、フランス、オランダなどで定着している。キノコ由来のマイコプロテインを原料とする“クオーン”は、非動物性タンパク質と食物繊維が豊富な肉の代替食品で、1990年頃からスーパーなどで販売されている。
「トラディショナルなものをどのように融合させるかが課題だ」。こう語るのはP-lab事務局の佐藤慎哉氏。アメリカは日本の伝統食“豆腐”のようなものがないため、代替食品に注目が集まるという。一方、日本はもともと動物性のタンパク質摂取量がそれほど多くなく、豆腐なども普段から食べてきた。日本でのマーケティング戦略は、こうした食文化のバックグラウンドを理解しなければならないと指摘する。P-lab事務局の大村淳氏は、“代替え”という表現では市場拡大は見込めないという。「世界市場では動物性と植物性をミックスしたハイブリッド版がトレンドになっている。日本人はもともと、豆腐ハンバーグのようなハイブリッド版を生み出し、節約にも繋げてきた。こうした知恵を持つ日本がプラントベース分野で世界をリードする可能性は十分にある」という。P-labは今後、健康面についてアカデミアとの連携を強化していく方針だ。健康イメージのみならず、エビデンスベースの提案で利用の裾野を広げていきたいとしている。つづく
詳しくは健康産業新聞1807号(2025.3.5)で
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