【話題追跡】 産学連携の新素材開発・研究、増加傾向

 文科省は7月31日、大学等における産学連携等実施状況の令和4年度実績の調査結果を更新。全国の国公私立大学および高等専門学校、大学共同利用機関の計1,076機関を対象とした調査で、民間企業との共同実施件数は3万300件(前年度比2.2%増)に。直近5年の統計では、コロナ禍の2020年に実施件数が微減となったものの、研究費受入額は5年連続純増で推移している。分野別でみると、健食・化粧品開発を含む「ライスサイエンス分野」は、全体(11カテゴリー)の28.4%と約3割を占めている(総務省「科学技術研究調査」)。

 

 増加の背景には、大学側の積極的な研究姿勢が挙げられる。健康意識の高まりを受け、ヘルスケア領域の研究には前のめりだ。企業側も慢性的な人材不足を大学の力を借りることで補完できるメリットも大きい。こうした流れを受け、健食・化粧品関連企業との連携を推進する大学が増えている。順天堂大学では寄付講座の設置を機に、大学の知をさらに有効活用する手段として包括連携の締結を推進する。これまでに大塚製薬、ファンケル、ロート製薬、ヤクルト本社、花王などで実績がある。寄付講座には、大学の研究現場のニーズと、企業の研究現場で培った知見を活用して、社会的な課題解決に貢献する新たな研究知見を得るだけでなく、企業側には将来の人材獲得に繋げる狙いもある。寄付講座は、大学側との講座内容の協議・検討を経て、1講座当たり「単年度で500万円以上」(早稲田大学の場合)で開設でき、法人税法上、全額を損金扱いとする税務処理が可能だ。

 

 産学連携共同研究実施機関トップの東京大学では、素材開発や研究に加え、健康食品や化粧品に関する出口戦略も用意する。東京大コミュニケーションセンターを運営する㈱UTプロダクツは、WEB通販サイト「オープンラボ(OPEN LAB.)」を開設している。“大学の知で健康と美をあなたに”をテーマに、東大サプリメント『アミノ酸配合ゼリー』等をはじめ、東大発ベンチャーとして有名なユーグレナ社の関連商品のほか、北海道大が手掛けた“がごめ昆布”使用の化粧品、弘前大が研究開発に関わった『だぶる黒茶』など、国内の大学の研究成果で誕生したサプリメント、健康食品、スキンケア用品を展開し、市場開拓にも手を伸ばしている。つづく

 

 

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