特集【医家向けサプリメント】 免疫調整から栄養療法まで活用広がる

 医療機関でサプリメントが広がる契機となったのがちょうど10年前。2014年8月「患者の療養の向上」を目的に、「医療機関におけるサプリメント等の食品の販売を明確化する事務連絡」が通知。2015年に政府が閣議決定した。その後ドクターズサプリメントが浸透し始めた。それまでは、統合医療を行う医師らの間で、がんなどの治療、術後のケアなどに利用されることが多かったが、現在は、健康増進や美容、フレイル予防、エイジングケアまでに利用が広がっている。西洋医学一辺倒に限界を感じた帯津三敬病院・名誉院長帯津良一氏は、「身体だけでなく心の状態も診ないといけない。薬では治せない病気がある」というポリシーのもと、30年以上前からホリスティック療法やサプリメント療法を行っている。

 

 帯津医師は、ナットウキナーゼのサプリメントを自身でも摂取しており、自身が経営する帯津三敬病院でも販売している。同院では、このほか乳酸菌やアラビノキシラン含有のサプリメントがロングセラーだとという。栄養療法を行うみぞぐちクリニックの溝口徹医師は20年前、家族の原因不明の病が、栄養療法で回復に向かったことをきっかけに保険診療から自由診療に変え、栄養療法を行っている。栄養療法を推奨するオーソモレキュラー医学会会長の柳澤厚生医師は、「10年前と比べるとサプリや栄養療法に対する考えが格段に変わった。まだメジャーな分野ではないが、慢性的な体調不良など、薬以外で健康になる方法が見直されている」と話す。

 

 眼科医院でもサプリメントの扱いが増えている。眼抗加齢医学会は、今年3月にアップデートセミナーを開催。聖隷浜松病院アイセンター長の尾花明氏は、ルテインの摂取が加齢黄斑変性に有用と発表を行った。ルテインサプライヤーによると、「医療機関向けのサプリメントの採用は年々増えている」と話す。また、海外の医療機関で広がりを見せており、海外売上比率が増えているメーカーも多い。

 

 厚生労働省の統計によると、令和2年の19床以下の医療機関は全国で10万2,612軒あり、その内、自由診療のみを行うクリニックは9,263軒と、前回調査より1割程度増加している。保険診療で診られる内容に限界を感じ、若い医師らが自由診療のクリニックを開業するケースも増えている。同省が発表した令和 4年の国民概算医療費は、前年比4.0%増の46兆円となり令和2年を除いて年々上昇している。医療費は過去最高値を記録し、保険診療の逼迫が危惧されている。超高齢化社会の中、厚生労働省は、認知症やフレイル予防に啓発活動を敢行している。2025年を目処に「地域包括ケアシステム」が開始され、各市町村が医療機関と連携し市民の健康長寿をサポートする取り組みが始まる。こうした中、三菱商事ライフサイエンスと東京都健康長寿医療センターは、高齢者のNMN摂取によるフレイル・サルコペニア対策の共同研究を行っている。NMNなどの新規成分が、医療機関で広く利用される可能性も出てきた。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1792号(2024.7.17)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら