特集【注目のキノコ素材】 認知機能など新たな研究開発進む

 中国と並びキノコ大国の日本には、5,000種類以上のキノコが存在。健康食品に用いられるキノコは、シイタケやエノキダケ、マイタケ、冬虫夏草や霊芝、アガリクス、タモギダケ、ハナビラダケ、ヤマブシタケ、カバノアナタケ、カワラタケ――など多種多様だ。ここ数年は、日本では冬虫夏草の開発が進み、機能性研究も活発化している。中国では、コウモリガの幼虫に寄生したキノコのみを冬虫夏草と呼び、天然の子実体は非常に高価で、キロ数百万以上の値が付くことで知られる。一方、国内では昆虫に寄生成長したキノコ全般を冬虫夏草と呼ぶ。冬虫夏草の菌糸体や子実体には、「コルジセピン」や「ナトリード®」など有効成分が含まれている。冬虫夏草は滋養強壮や免疫系の素材として認知が高いが、第一工業製薬は独自成分「ナトリード®」で、認知機能分野の機能性表示食品として受理されている。

 

 伝統的なキノコ素材である霊芝は、β-グルカンをはじめとした多糖類に加え、300種類以上のトリテルペノイド類を含有し、多種多様な薬理活性を有する。これまで免疫賦活、血圧抑制、健胃、血液浄化作用、抗酸化、抗アレルギーなど様々な研究成果が報告されている。市場では、エビデンスデータをもとに機能性表示食品の開発を進める動きも。また、栽培・加工技術や品質の高さから、日本産霊芝の海外での評価は高い。

 

 また近年、人気が出ているのはタモギダケだ。有用成分「エルゴチオネイン」の研究開発が進んでいる。エルゴチオネインは、アミノ酸様物質の一種で、強い抗酸化作用が確認されている。免疫賦活、認知機能サポート、育毛効果を持ち、同成分含有のサプリメントの上市が続いている。エル・エスコーポレーションは、エルゴチオネインを機能性関与成分とした機能性表示食品『記憶の番人』を発売。通販やドラッグストアで売れているという。この他、アガリクスは2000年代初頭に起きたアガリクスショックも収まり、一部の医家ルートでは根強い人気素材となっている。

 

 キノコサプリの販売チャネルは、漢方薬局、訪販、宣講販などの対面販売、統合医療を実践するクリニックなどが中心。特にクリニックでは、がんの免疫療法の補助などで、古くからキノコ素材が活用されている。動物病院も同様で、マイタケや冬虫夏草を治療サポートに活用したり、物販としてキノコサプリを扱うところが増えている。臨床試験などを繰り返しエビデンスの充実と長い食歴を有することから医家向けルートの定番素材と言える。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1764号(2023.5.17)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら