特集【食品受託試験/機能性表示支援】 エビデンス構築の「目的多様化」

 食品受託試験企業(食品CRO)は、ヒト試験をはじめ、食品の機能性や安全性を証明する各種試験を実施する。機能性表示食品の届出支援のほか、トクホ申請支援、さらにはBtoB 向けのエビデンス構築など、試験実施のニーズは高まり続けている。2021年度はコロナ禍で停滞していたヒト試験の再開が相次ぎ、機能性表示食品は、制度開始後最高となる1,445品が年度内に届出され、CRO業界も特需の年であった。2022年は、11月30日発表分までで受理件数は617件。前年と比較すると試験実施・届出のペースは若干緩やかになったものの、多くの食品CROで、引き続き活発に機能性表示食品向けの試験実施や届出サポートの引き合いがあった。

 

 今回の取材で食品CRO関係者からは、「腸内フローラ」「血糖」「脂質」といった生活習慣関連が引き続き好調となっているほか、「認知機能」「ロコモ」といった高齢者向けの検査依頼が増加しているという声が聞かれた。またWithコロナのライフスタイルが浸透したことを反映して、「抗ストレス」や「睡眠」の表示を目ざす試験もトレンドとなっている。他にも、エイジングケアへの関心の高まりから化粧品と共に、インナービューティ―サプリメントを開発する企業が増え、「肌試験」を行い、エビデンス構築を行う例も増えているという声が聞かれた。

 

 新型コロナの影響が長引く中、「免疫」表示は消費者からのニーズが高い。2020年8月にキリングループのプラズマ乳酸菌が「免疫機能の維持に役立つ」で受理して以来、複数の企業が試験を進めており、近々の届出受理も期待されているが、12月15日時点で新たな届出は実現していない。免疫を高めることが食経験上知られている素材は、乳酸菌以外にもβ-グルカンやポリフェノール、麹菌産生物など幅広く、摂取により免疫指標が実際に変化する素材も数多くあるため「第二の免疫表示」は業界内で待望されている。「日本抗加齢協会から『免疫表示の科学的根拠に関する考え方について』が発表されたため、届出が進むと期待していたが、なぜなのか」と疑問の声も上がっている。

 

 そのような中で、免疫表示とは別に、より印象的なヘルスクレームを開発しようとする動きも進んでいる。CRO関係者からは、「『粘膜バリアを高める』『腸内のブロック力を高める』といった、新たなヘルスクレームを実現し、同時に消費者への訴求を行うことで、免疫に関連する腸内環境や口腔ケアの重要性が普及するのではないか」という意見も聞かれた。

 

 ヒト試験の実施目的は多様化が進む。従来の研究開発や機能性表示食品の届出、トクホ表示許可に向けた試験のみならず、BtoBのプレゼン向けのエビデンス取得のために試験を行う例が増えている。サプリメントや化粧品の商品開発の場や商談の場でエビデンスを考慮することが当たり前となる中、CRO関係者からは、「企業間の商談の場やプレゼンで、根拠が従来に増して求められるようになった」という声が聞かれた。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1754号(2022.12.21)で
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